徹底分析シリーズ すべての人に適切な医療を—こころの病気がある人に麻酔科医ができること
巻頭言
柿沼 孝泰
1
1東京医科大学医学部 麻酔科学分野
pp.865
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202640
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SDGs(持続可能な開発目標sustainable development goals)という言葉が広がって久しい。誰一人取り残されることなく,人類が安定してこの地球で暮らし続けることができるように,世界のさまざまな問題を整理し,解決に向けて具体的な目標を示したものである。2015年に国連で採択され,国際社会は一致団結して,2030年までにこの目標を達成しよう,と合意した。17の目標の3番目に,「すべての人に健康と福祉を」がある。採択されて8年になるが,果たして医療現場では,この目標は認識されているだろうか。麻酔科医にできる,よりよい世界を目指す取り組みは何であろうか。
例えば,手術が必要な患者に精神疾患や発達障害があると,その対応方法を知らないというだけで受け入れを敬遠されるという現実はいまだ続いている。また,救急外来や病棟でもその扱いの困難さから通常の医療を受けられないことがある。すべての人が適切な医療を受けるために,麻酔科医ができることは何か。必要なのは,受け入れる前にどこに相談し,どのように準備や対応をすればよいか,という知識である。少しでも知識があれば,対応できることがたくさんあるはずである。本徹底分析シリーズを通して,精神科と身体科の橋渡しを麻酔科医が担える一歩に向けて,まず「知ること」から始めてほしい。精神疾患・発達障害を理由に適切な医療を受ける機会を失うことがない世界になりますように。
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