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医療過誤に関するものを中心に,民事・刑事を含め医療における様々な紛争や訴訟が着実に増加している.これについては,一方では従来日本の風土において,ややもすれば十分主張されてこなかった患者の意見や権利が表明されつつあるという点で肯定的に評価する見方がある反面,他方では,それが過度の「医療の法化」現象を招いたり,かえって医療者と患者の間の信頼関係を損ね,防衛的な医療をもたらしてしまう,等の否定的な評価や危惧も存在している.いずれにしても,医事紛争への対応という点を中心に,「医療と法」のあり方が,現在の日本において今大きな曲がり角に立とうとしており,それについて,場当たり的ではない,正面からの検討やシステム整備等の対応が必要になっていることは確かである.
本号の特集企画はそうした問題意識から編まれたものであり,まずは「医療と法」をめぐる今日的な状況が包括的な視点から展望されるとともに,これまで体系的な整理や政策対応がなされてこなかった,医療過誤における民事・行政・刑事責任の分担のあり方が事例分析を踏まえて吟味される.併せて,訴訟に代わる紛争解決手続きとして,しばらく前から注目されているADR(Alternative Dispute Solution)について,法律家およびメディカル・コンフリクト・マネジメント等の視点から現状や今後の方向が示唆される.さらに,最近アメリカにおいて新たな展開が進みつつある医療事故後の真実説明・謝罪のあり方についての動向が紹介され,また診療行為に関連した死亡の調査分析に関するモデル事業や,日本の代表的な医療消費者団体であるCOMLがスタートした「医療者のホンネと悩みホットライン」からうかがわれる医療者側の声や今後の対応課題が示される.
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