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Nature Medicine
Perspective:
Mello MM, Meschke JS, Palmer GH. Mainstreaming wastewater surveillance for infectious disease. N Engl J Med 2023;388:1441-4.
Article:
Diamond MB, Keshaviah A, Bento AI, et al. Wastewater surveillance of pathogens can inform public health responses. Nat Med 2022;28:1992-5.
■下水には多くの情報が含まれている
日本では2020年に,環境水調査による新型コロナウイルスSARS-CoV-2の下水からの検出状況が報告されている。横浜市の水再生センターで下水を採水し,その濃縮物と沈殿物からRNAを抽出して凍結し,解凍後にリアルタイムPCRを実施するという方法である。感染者の便中に排泄されたと考えられる下水中のウイルス量と患者数が相関する可能性が示唆され,感染持続のモニタリング手法としての有用性が示唆されたとしている(IASR 2020;41:122-3)。また2021年には,地域における感染のまん延状況の把握や,特定施設における感染症有無の探知などを行い,効果的,効率的な対策につなげることを目的として「下水サーベイランスに関する推進計画」が立案されている。
下水からのウイルス検出の歴史は,1930年代のポリオウイルスの検出にまで遡ることができる。ウイルスが糞便中や尿中に排泄され,下水中でも安定していることが,この手法を応用できる条件となる。ポリオウイルスやSARS-CoV-2,インフルエンザウイルス,エンテロウイルスD68などが,下水の環境調査の対象となり得る。抗菌薬耐性病原体の発見にも有用である可能性がある。環境水調査は,患者が有症状となる前の感染症の発見や,ワクチン接種の指標となり得る。しかし,これらの手法を有効に利用するためには,診断技術の精度を上げる必要がある。
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