巻頭言

麻酔科医は多種多様な手術に携わっている。術式ごとにさまざまな注意点があり，術式を知らずに安全で最適な麻酔はできない。予定手術をひととおり経験するだけでも大変だが，緊急手術ははるかに難しい。時間の猶予がないだけでなく，情報は限られ，人手も十分ではなく，すでに危機的状況に陥っていることもある。緊急手術というと救急外来からの直行を思い浮かべがちだが，術後に戻ってくるリターンマッチもある。この再手術も術式ごとに特徴があり，一筋縄ではいかない。即断を迫られる状況判断は容易ではなく，手技的にも難易度が上がり，生命予後にさえかかわることがある。本徹底分析シリーズでは，数ある再手術のうち①術後当日に行われることが多いもの，②多くの施設で起こり得るもの，という観点から7種に絞り，麻酔管理のポイントを整理する。これを知ることにより，緊急再手術に特有の大きな落とし穴にはまるのを防ごう。また，締めくくりとして，再手術の判断を早めて危機的状況に陥る前に患者を救うPACUの役割についても，再認識しておこう。若手麻酔科医が一人で夜の当番を始めるとしばしば飛び込んでくる再手術について，呼ばれる前に目をとおしておこう。