巻頭言

われわれ麻酔科医にとって手術室は，多くの時間を過ごす，いわば第二の「わが家」といっても過言ではない。いや，実際に自宅よりも多くの時間を過ごしているかもしれない。そんな手術室の「住人」なのに「わが家に知らない家電製品がある」というのはいかがなものだろうか？

　手術室には多くの医療機器・器具がある。麻酔管理に直結するものから，影響を与えるもの，直接関連がないもの，などなど…。今回の徹底分析シリーズでは，手術室でよく見る電気メス，エネルギーデバイス，自動縫合器および吻合器，鋼製小物，医療用ナビゲーションシステムや自己血回収装置などを取り上げた。このような，麻酔管理とは直接関連がない医療機器・器具を中心に，原理や使用方法などの知っておきたい基本について，麻酔科医以外の執筆陣にも参加を願い，解説していただいた。

　離被架の向こう側の手術についてまったく知ろうとしない姿勢はいただけない。われわれが麻酔する患者は必ず手術を受けている。その手術を知らずには上手く麻酔できないではないか。モニター画面ばかり眺めているのではなく，術野を見て，執刀医の声に耳を傾けて，住み心地のよい手術室にしていただきたい。