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Anesthesiology
Editorial:
Myles PS, Medcalf R. Fibrinolysis and trauma outcomes. Anesthesiology 2022;136:7-9.
Infographics:
Wanderer JP, Rathmell JP. Fibrinolysis transitions:adverse outcomes in trauma. Anesthesiology 2022;136:A17.
Article:
Rossetto A, Vulliamy P, Lee KM, et al. Temporal transitions in fibrinolysis after trauma:adverse outcome is principally related to late hypofibrinolysis. Anesthesiology 2022;136:148-61.
■重症外傷では凝固障害が起こる
重症外傷では受傷後早期から凝固障害が起こる。凝固障害は,アシドーシス,低体温とともに“死の三徴lethal triad”と呼ばれているように,凝固障害があると死亡率が高くなることが報告されている。外傷による組織因子放出と外因系の活性化や,組織低灌流により血管内皮細胞から放出された組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)がプラスミノーゲンを分解してプラスミンを産生し,プラスミンがフィブリン溶解(線溶)することなどが関係していると言われている。plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)は,プラスミノーゲンの結合に重要なフィブリンのC末端リジンを選択的に除去し,線溶活性を抑制する。t-PAとPAI-1の濃度バランスでプラスミノーゲン活性化状態が決定される。トラネキサム酸(TA)はリジンに類似した構造をもち,リジン結合部位を介したプラスミノーゲンのフィブリンへの結合を阻害し線溶を抑制する。2010年のClinical Randomisation of an Antifibrinolytic in Significant Haemorrhage(CRASH)-2トライアルでは,受傷後3時間以内にTAを投与すると,成人外傷患者の出血関連死亡率や全死亡率が低下することを示している。
外傷性凝固線溶障害は,時間経過とともに線溶活性が変動することが知られている。PAI-1は,t-PA放出に遅れて発現するため,外傷後一定時間が経過すると,受傷直後の線溶亢進から線溶抑制へと移行する。TAをこの線溶亢進時期に投与すると,患者予後が改善すると考えられている。
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