快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ⑤—ハエに麻酔をかけると何がわかるのか?:遺伝子と麻酔の関連について
田中 良晴
1
Yoshiharu TANAKA
1
1大阪府立大学工学研究科量子放射線系専攻・放射線生物学/分子遺伝学
pp.1311-1318
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201857
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はじめに
筆者は,約30年前に大阪府立大学に着任し,キイロショウジョウバエを用いて,特に遺伝子やタンパク質を中心に麻酔薬の作用機序の研究を行ってきた。しかし,遺伝子・タンパク質・組織学を中心とした研究は,費用がかかるし,変異ハエも恒温槽の何度もの故障で絶え,また自分の後継ぎも取れそうにないので,10年ほど前にやめ,ストレス,放射線の生物的影響といった研究にシフトした。ということで,若い麻酔科医や麻酔研究者に語るのはおこがましいことである。
やはり麻酔学研究は,医学,歯科医学,獣医学などでの応用が主で,しかも局所麻酔薬では標的や特異的作用がはっきりしている場合もあるが,全身麻酔薬の機序の統一的な理解はまだまだである。あるいは,標的そのものがあるかもわかっていないのが現状である。したがって,タイトルを“ハエに麻酔をかけると何がわかるのか?”としたが,結局何もわからないじゃないかと取られても仕方がないが,少しお付き合いいただければ幸甚である。
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