快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ⑪—これからの麻酔メカニズム研究の展望〜麻酔の要素の新しい考え方〜
中江 文
1,2
Aya NAKAE
1,2
1大阪大学大学院生命機能研究科 特別研究推進講座
2脳情報通信融合研究センター 国際電気通信基礎研究所
pp.725-732
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202031
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はじめに
筆者が麻酔の臨床を学んだ当時,プロポフォールは眠らせる薬,つまり鎮静のための薬,フェンタニルは痛みをとる薬,つまり鎮痛のための薬と教わった。だから,麻酔中は鎮静度が足りないのか鎮痛が足りないのかを,血圧や心拍数といった限られたモニター上の数値から想像し,それぞれの薬の投与量を調節してきた。今思えば,そこに確固たる根拠があったわけではなく,その時一緒に仕事をするベテラン麻酔科医の嗜好に左右されていた。ある医師は「もっと寝かせないとだめだろう!」と言い,ある医師は「これは,侵害刺激がブロックできていない状態なので痛み止めだ!」と,それぞれの持論を展開していた。ここで不思議なのは,どちらのやり方を選択しても,それなりのゴールに到達できたということである。
なぜだろう?
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