快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ④—先生,全身麻酔中は眠っているだけなんですか?
伊東 久勝
1
,
廣田 弘毅
1
Hisakatsu ITO
1
,
Koki HIROTA
1
1富山大学附属病院 麻酔科
pp.1207-1217
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201832
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「今回あなたが受ける麻酔は全身麻酔といって,完全に眠ってしまう麻酔です。持続的に麻酔薬を投与することによって,手術中はずっと眠った状態になっていますから,心配いりませんよ」
にっこり笑って私は嘘をつく。私が言う「眠った状態」とは,麻酔によって覚醒水準が低下しているという状態のメタファーにすぎない。患者に不安を抱かせないという意図があって,あえてこの言葉を選んでいるのだが,患者に「麻酔=睡眠」を連想させる明らかなミスリーディングを誘導していることを,私は理解している。確かに意識レベルの低下という一点において,麻酔は睡眠とよく似ているかもしれない。
…
だが,麻酔は睡眠ではない。
むしろ「昏睡」に近いのだ1)。
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