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Anesthesiology
Editorial:
Leslie K. Sugammadex and postoperative pulmonary complications:Is stronger evidence required? Anesthesiology 2020;132:1299-300.
Article:
Kheterpal S, Vaughn MT, Dubovoy TZ, et al. Sugammadex versus neostigmine for reversal of neuromuscular blockade and postoperative pulmonary complications (STRONGER):a multicenter matched cohort analysis. Anesthesiology 2020;132:1371-81.
■筋弛緩薬の効果残存のリスク
アセチルコリン受容体から筋弛緩薬が離れることで筋弛緩作用は消失する。手術終了時には,筋力が十分に回復していることを確認して抜管する必要がある。筋力回復の評価に用いられている頭部挙上5秒間や肺活量などの臨床的な指標の信頼性は低いと考えられ,日本麻酔科学会の「安全な麻酔のためのモニター指針」でも,「筋弛緩モニターは必要に応じて行うこと」とあったのが,「筋弛緩薬および拮抗薬を使用する際には,筋弛緩状態をモニターすること」と2019年3月に改訂されている。
筋弛緩薬を用いた場合に死亡率が上昇することは,有名なBeecherとToddの“A study of the death associated with anesthesia and surgery”(Ann Surg 1954;140 :2-35)で指摘されている。クラーレのような長時間作用型筋弛緩薬から,ベクロニウムやロクロニウムなど短時間作用型筋弛緩薬へと変わり,筋弛緩効果の残存も減少すると考えられた。実際には,短時間作用型であるがゆえに拮抗がなされなかったり,拮抗薬の投与が不十分であったりして,術後の筋弛緩効果の残存の頻度は20〜40%にも及ぶと報告されている。筋弛緩薬の効果が残存していると,オトガイ舌筋筋力低下により嚥下障害が起きたり,上部食道括約筋の緊張低下などのために誤嚥を起こす危険性もある。気道閉塞,低酸素血症,無気肺や肺炎の頻度が上昇すると報告されている。しかし,筋弛緩薬や拮抗薬の種類により差があることを示す強いエビデンスはなかった。
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