新説 浮世鑑
病膏肓に入るか,入らぬか
石黒 達昌
pp.667
発行日 2020年6月1日
Published Date 2020/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201705
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まずは言い訳から。長らく休載しましたが,実は十年以上連載していた「伝統ある」コラムではあるのです。なぜ休載していたのかというと,ある時期から,「これ前にも書いたよな」ということが多くなったからです。これは物書きとして書き続ける意義にかかわる由々しき事態でした。しかしながら,長い充電期間を経て,空っぽのプールに水が溜まり,溢れてきたのが今回の原稿です。
隠遁生活に別れを告げる直接のきっかけとなったのは,新型コロナウイルスです。本稿には実は下書きがあり,そこでの結論は,実際のウイルス感染より先にSNSがわれわれに恐怖を感染させてしまった,という今から考えると実に安直なものでしたが,全面改訂が必要なほど急速に状況が変わってしまいました。状況を見誤ったのはちょうど,北京などと比べて武漢での死亡率が異様に高すぎると報道されていた頃です。中国の医療体制の質を疑いながらも,その破壊が病態をより悪化させているのだろうとぼんやり考えていました。潮目が変わったのは,北海道での感染増加が報道された頃です。そしてCNNで報じられるイタリアでの惨状が私を混乱させ,まさかのニューヨークと続きます。米国が中国より酷くなるなど誰が想像したでしょうか。
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