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特集 こんなときどうする?―耳科手術編
人工内耳の電極が入らない!?
How to do if it is difficult to insert the electrode of cochlear implant !?
岩崎 聡
1
Satoshi Iwasaki
1
1信州大学医学部附属病院人工聴覚器学講座
pp.663-667
発行日 2011年8月20日
Published Date 2011/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101936
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Ⅰ.人工内耳のシステムと一般的な電極挿入方法
人工内耳は高度感音難聴または聾により十分な聞き取りができない人の聴覚獲得のための治療法であり,近年目覚ましい普及を遂げている。Houseらが1961年初めて単電極型の人工内耳手術を行ってから,1978年にClarkらにより多電極型の人工内耳手術が行われ,現在に至っている。わが国においては,1980年に神尾が単電極型を,1985年に舩坂が多電極型の人工内耳手術を行い,1994年に保険適応された1)。人工内耳は半埋め込み型であり,マイクロホン,音声解析装置,電池,体内への送信装置からなるスピーチプロセッサーと呼ばれる体外部とアンテナ,信号解析・送信装置,電極からなる体内部の装置で構成されている。わが国ではメドエル社(オーストリア),コクレア社(オーストラリア),バイオニクス社(アメリカ)の3社の人工内耳が認可されている。
電極のチャンネル数,電極の長さは機種により異なるが,基部から先端に向かって高音から低音に周波数の配列があり,複数の電極を同時に刺激することで蝸牛を刺激している。電極の刺激方法には双極刺激法と単極刺激法とがある。前者は隣り合う蝸牛内電極間で刺激する方法で,後者は蝸牛内電極と蝸牛外に設置された不活電極間で刺激する方法である。現在は3社とも後者の単極刺激法が使用されている。入力された音情報を電気信号に変換する方式をコード化法と呼び,基本的には2つの処理方法がある。1つは分解能重視型で,音声波形をより忠実に再現できる特徴があり,もう1つは周波数情報重視型で,周波数情報を細かく伝える特徴がある2)。
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