症例検討 「ショック」との遭遇
巻頭言
須崎 紳一郎
1
1武蔵野赤十字病院 救命救急センター
pp.1081
発行日 2010年11月1日
Published Date 2010/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101069
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- 文献概要
(緊張気味の研修医)
「えー,患者は,血圧90とショックバイタルを呈していまして…」
(指導医,つまりオーベン)
「ショックバイタル?そりゃ何だ?血圧90だったらショックなのか。医学生でもあるまいに。そんなプレゼンを聞くとはオレはショックだぜ」
学会締め切りに追われているオーベンは朝から機嫌が悪い。でも,ではショックって何なのだ。“組織の酸素需給アンバランス”と言おうと“末梢循環不全”と言い換えようと,実際は見えるものではないから机上の定義だ。患者の“顔色が悪いこと”という捉え方は,直感的にはかなりいい線いっていると思うが,あまりに主観的,文学的すぎて,電子カルテには書けても原稿やマニュアルに書くには気恥ずかしい。
ショックを認識したとして,その対処も実はcontroversialだ。
ショックスコア,臓器不全スコアの有用性をどう見るか。
乳酸値を基軸指標とした治療戦略は成立するか。
粘膜下PCO2は組織代謝指標になるか。
循環指標の測定手段として真に有効なのは何か。
カテコールアミンの適応,使用法と投与目標はどうするのがよいか。
ステロイドの適応は本当にあるか。
議論はあるものの,だからと言って黙って見ていることが許されないのが「ショック」である。
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