特集 病気と社会を考える
巻頭言
広井 良典
1
1千葉大学法経学部
pp.13
発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101855
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そもそも病気とはいったい何だろうか.また,一体なぜ人は病気になるのか.新年号ということもあり,こうした普段あまり発することがないような,自明ともいうべき問いについて考えてみたい.
いま掲げたような問いは,一見抽象的な話題のようにも響くが,「現代の病」をめぐる状況を考えると実質的な重要性を持っており,また,近年の最先端とも言える様々な研究分野が新たな光をあてて探求しているテーマでもある.例えば90年代頃から台頭してきた進化医学と呼ばれる分野は,病気というものを人間とそれを取り巻く環境とのギャップから捉えるという,根本的な視点を提起している(本特集の冒頭の井村裕夫氏の論文参照).また近年,社会疫学と呼ばれる分野が発展し,例えばストレス,労働のあり方,経済状態,コミュニティのつながりなど,「健康ないし病気の社会的決定要因(social determinants of health)」,あるいは病気の生成と社会的・経済的な要因との関わりが明らかにされつつある(岩永・近藤論文参照).
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