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“see one, do one, teach one”はもう古い!?
日本の卒前医学教育と同様に,米国においても4年間の医学部教育の間で,穿刺やその他のベッドサイド手技のトレーニングに医学生が費やす時間は決して十分であるとはいえない。さらに,末梢静脈ラインの確保や尿道カテーテルの挿入といった基本的な手技についての教育にも,あまり重点が置かれていない。その理由の一つとして,これらの基本手技を実際の診療現場で医師が自ら行う機会がほとんどなく,その習得が必須と考えられていないことが挙げられる。例えば,通常の採血にしても,米国では専門の採血チームが行うことがほとんどであるし,末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の挿入なども特別にトレーニングを受けた専門の看護師などが医師から依頼を受けて行っている。
それに対して,中心静脈ラインや胸腔ドレーンの挿入といった,主に救急室や集中治療室で行われるような侵襲度の高い手技のほとんどは医師によって行われる(米国ではnurse practitionerやphysician assistantもこれらの手技を医師の指導のもとで行うことがある)。特に大学病院などの教育病院で研修医がこれらの手技を行うことが日常的であるのは日本も米国も変わらない。以前は“see one, do one, teach one”という言葉に象徴されるように,実際の症例からそれらの手技を習得していくのが研修医にとっての主なトレーニング方法であった1)。筆者も初期研修医の頃は,中心静脈ラインや胸腔ドレーンの挿入,気管挿管といった手技の経験を同期の研修医たちと競い合っていた。しかしながら,このようなトレーニング方法は医療安全の面からは決して推奨されるものではない。その代わり,最近ではoff the job trainingがさまざまな方法で積極的に行われている。本稿では,米国施設において行われている穿刺手技のoff the job trainingについて紹介する。
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