徹底分析シリーズ 筋弛緩モニタリング リターンズ!
筋弛緩モニタリング時の神経刺激の原理—うまく刺激するコツは強度とインターバル!?
鈴木 孝浩
1
Takahiro SUZUKI
1
1日本大学医学部 麻酔科学系麻酔科学分野
pp.450-453
発行日 2019年5月1日
Published Date 2019/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201378
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神経刺激
個々の神経とそれが支配する筋線維群を「運動単位」と呼ぶが,同じ運動単位内でも筋線維ごとに電気刺激に対する感受性が異なる。よって刺激が不十分な場合には,閾値を超えない筋線維では脱分極できず,閾値を超えれば脱分極するといった全か無かの法則が混在した状態となっている。神経電気刺激時,電流値を増大していくと,初めて筋収縮が得られる電流値を「閾値刺激」と呼ぶ(図1)。その後,S字カーブ状に急激に筋収縮反応が増大し,反応がプラトーとなる際の電流値を「最大刺激」と呼ぶ。最大刺激時には対応するすべての神経線維が脱分極し,その神経に支配されるすべての筋線維が収縮していることになる。よって,最大刺激でモニタリングを継続すればいいように思われるが,その最大刺激値を変化させる要因が麻酔の時間経過とともに加わる。
例えば,経皮的な神経刺激の場合,全身麻酔中に電極と皮膚との接触性変化や皮膚の乾燥などの因子により,インピーダンス(皮膚抵抗)が増加する可能性がある。そして,抵抗が増加すれば神経に到達できる電流値が減少してしまう(オームの法則「電流=電圧/抵抗」から推定できる)。また,肢位が変われば電極と神経間距離も容易に変化する。そこで持続的な筋弛緩モニタリングをする場合には,それらの変化に対応でき,安定した筋収縮反応が得られるよう,あらかじめ最大刺激の10〜20%増の「最大上刺激(supramaximal stimulation)」を用いるのが一般的である。
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