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ダブルルーメンチューブは,肺分離や一側肺換気の際に最もよく使われる気道確保用具の一つです。二腔構造で左右の別があること,シングルルーメンチューブよりも太くて硬いこと,留置部位が深いことなどから,適切なものを選択して正しく用いないと,換気不全や気管・気管支損傷など,重篤な合併症を起こしかねません。ビデオ喉頭鏡で良好な声門部の視野が得られたとしてもダブルルーメンチューブの挿管にしばしば難渋するのは,その特殊な形状によるところが大きいと思います。
ダブルルーメンチューブのもう一つの特徴として,メーカーによって形状や使い方がかなり異なることが挙げられます。内腔のサイズが同じだとしても,A社の製品ではB社のものよりも太い気管支鏡を用いることができるのは,一つのわかりやすい例でしょう。私個人の経験としては,気管支鏡観察下にダブルルーメンチューブを適切な位置に留置する際に,製品によってチューブ越しの気管や気管支の見やすさに違いがあると感じています。バットやグラブ,スパイクなどにこだわり抜くイチロー選手のように,麻酔科医も一流アスリート並みに,あるいはそれ以上に用具にこだわるべきなのかもしれません。そこで今回の徹底分析では,このダブルルーメンチューブの操作に習熟するのに必要な,基本的知識や実際の使い方,用具としての限界,改良や開発の方向性についてまとめました。
なお,本特集では一般に広く用いられている「ダブルルーメンチューブ」という呼称を用いましたが,日本麻酔科学会編『麻酔科学用語集(第4版)』では,「二腔気管支チューブ」,「二腔気管チューブ」,「二腔チューブ」が正式名称ですので,論文や正式な報告書などを書く際は注意してください(564ページのコラム参照)。同様に各社の製品についても,「ブロンコ・キャス」や「ブルーライン」など,読者になじみのある通称を多く用いたことも,ここでお断りしておきます。
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