症例検討 呼吸器疾患患者の周術期管理
巻頭言
石川 晴士
1
1順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座
pp.949
発行日 2017年10月1日
Published Date 2017/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200961
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- 文献概要
ロンドンオリンピック銅メダリストで現在,スポーツキャスターとして活躍している寺川綾さんは,子供のころから喘息を患っていたそうです。屈強なアスリートの中にも気道過敏性の高い人が少なくないと聞きますが,彼らが手術を受けることになったら,われわれ麻酔科医はどのような周術期管理を行うでしょうか。気道管理には細心の注意を払うでしょうし,気管支拡張薬の投与も考慮するかもしれません。しかし仮に,喘息の重症度が同じだったとしても,今回の症例検討に登場する,認知症のほかにサルコペニア(加齢性筋肉減少症)を有する可能性のある80歳女性とまったく同じ管理を選ぶ麻酔科医はいないでしょう。
当たり前のことですが,麻酔科医は呼吸器系併存疾患に対して麻酔をするわけではありません。麻酔の対象は,まったく異なる背景をもつ一人一人の患者たちです。彼らを術前評価,特に呼吸機能評価を通して総合的に理解し,全身麻酔か区域麻酔かの選択はもちろんのこと,周術期リハビリテーションや禁煙指導を含めて,一人一人に合った最上の周術期管理を提示していくことが重要であることは言うまでもありません。本症例検討では,これらの点について余すことなく論じられており,読者の力強い味方に仕上がったと確信しています。
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