症例カンファレンス
冠動脈3枝病変を有する患者の進行性胃癌
加古 英介
1
,
下出 典子
2
,
澤田 憲一郎
3
,
藤田 信子
4
Noriko SHIMODE
2
,
Kenichiro SAWADA
3
,
Nobuko FUJITA
4
1名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔科学・集中治療医学分野
2兵庫医科大学病院 手術センター
3板橋中央総合病院 麻酔科
4聖路加国際病院 麻酔科
pp.503-519
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201119
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高齢化が進むなか,周術期の死亡率は1%以上とも報告される。周術期の虚血による心臓へのダメージは,PMI(周術期心筋傷害perioperative myocardial injury,もしくは周術期心筋梗塞perioperative myocardial infarction)と呼ばれ,単独で死亡に関連する因子であることが知られている。また,近年の高精度のトロポニンT測定など,簡便に心筋虚血を診断できるツールが普及してきたことによって,かつて思われていたよりも多くの患者がPMIを発症していることが明らかとなり,65歳以上では16%とも報告されている(Puelacher C, et al. Circulation 2018;137:1221-32)。
今回,各施設に検討してもらったのは,進行性胃癌患者の術前検査中に冠動脈疾患coronary artery disease(CAD)の中でもリスクが高い左冠動脈主幹部(LMT)病変が見つかったケースである。内科的に冠動脈の血行再建をまず行うか,または冠動脈バイパス術(CABG)を行うのか,それとも胃癌の手術を先にすべきか。周術期の管理はどうすべきか,安全に患者が退院するまでのデザインが重要となる。3施設からの回答は,患者のリスク軽減に焦点を当て,どうすればリスクが最小になるかを深慮したものであり,それぞれの方針の組み立て方は大変参考になる。
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