徹底分析シリーズ 困難な呼吸器手術
巻頭言
石川 晴士
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院 麻酔・蘇生・ペインクリニック科
pp.629
発行日 2014年7月1日
Published Date 2014/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101102163
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- 文献概要
5月号では「低侵襲化」をテーマに呼吸器手術とその周術期管理を取り上げたが,本号では現代の呼吸器手術のもう一つの重要なテーマである「困難な症例」をキーワードとして特集を組んだ。呼吸器手術の「困難」にはさまざまな意味合いが含まれるが,おそらく日常的に最も多く遭遇するのが,心肺機能の低い患者であろう。これについては,手術の可否の判断を含め,いかに術前評価を行うかという観点から解説をお願いした。麻酔中の気道管理については,気道確保の始まり(挿管)と終わり(抜管)の両方を扱った。患者のアウトカムを改善させるために,いずれも呼吸器手術ならではの特殊な気遣いが必要となる点に注目していただきたい。そして術後呼吸器合併症を防ぐ観点から,特に下側(荷重側)肺病変を克服するための工夫として,呼吸リハビリテーションを紹介している。最後に,全身麻酔に耐えられないような困難な症例の治療の手段として,awake VATSを紹介させていただく。本来,呼吸器手術は全身麻酔下に行うのが原則だが,あえてそうしないことで困難を打開しようとするものである。 人口の高齢化と相まって,手術や麻酔,周術期管理が進歩することによって,これまで手術適応がなかった困難な症例に手術室で多く遭遇するようになった。こういった困難な症例は,これからますます増えることはあっても,決して減ることはないであろう。本徹底分析シリーズが,呼吸器手術領域における日常臨床の一助となることを願ってやまない。
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