徹底分析シリーズ 局所麻酔薬
巻頭言
櫻井 裕之
1
1杏林大学医学部 薬理学教室
pp.541
発行日 2015年6月1日
Published Date 2015/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200290
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- 文献概要
麻酔科医にとって局所麻酔薬は,日常診療でルチーンに使用する薬物であろう。なので,「何を今更,電位依存性ナトリウムイオンチャネルか」と,うんざりされる向きもあるかもしれない。しかし本当に“わかりきっている”ことばかりなのだろうか。筆者は薬理学の講義で,局所麻酔薬の神経線維の種類による感受性を教えている。一般的に無髄神経のほうが有髄神経より,また神経線維の細いほうが太いほうより,感受性は高いとされているが,教科書には細い無髄のCファイバーより太い有髄のAδファイバーのほうがリドカインに,より感受性であると書かれている。これをどう説明したものか困っていたところ,今回,本特集の「末梢神経の解剖と神経線維への選択性」を読んで,わかっていないということが判明した。このようなことはほかにもあるはずである。
今春の基礎医学系の学会で筆者は,イオンチャネルや輸送体の立体構造解析の講演を聴く機会が多かった。活性化リガンドや阻害薬存在下など,さまざまな条件での立体構造解析により,生理学的実験で得られていた一見説明が難しいデータが,初めて腑に落ち,事象を深いレベルで理解するには基礎に立ち戻ることが重要であることを思い知らされた。本徹底分析でも,麻酔科医が頻用する薬物について,より理解を深めてほしいとの思いで,基礎に立ち返ってメカニズムを解説してもらった。読者諸氏のこれまで腑に落ちなかった疑問が解けることを願っている。
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