徹底分析シリーズ 冠攣縮
冠攣縮の急性期薬物治療―冠拡張薬はすみやかに,そして十分に!
田村 貴彦
1
,
河野 崇
1
,
大下 修造
2
Takahiko TAMURA
1
,
Takashi KAWANO
1
,
Shuzo OSHITA
2
1高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座
2徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 病態情報医学講座 麻酔・疼痛治療医学分野
pp.754-759
発行日 2013年8月1日
Published Date 2013/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101890
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
冠攣縮は,欧米と比較して日本を含む東アジアに多く,異型狭心症,不安定狭心症および急性心筋梗塞の成因と深く関連していると考えられている。冠攣縮は,突発的な冠動脈の過収縮で発症し,冠動脈への血流低下から心筋虚血を引き起こす。通常,一過性のことが多く,適切に管理・治療されれば,予後は比較的良好と考えられている。
しかし,冠攣縮の20~30%は遷延化し,心室細動など重篤な循環虚脱に至る場合があり,死亡例も報告されている。したがって,冠攣縮が疑われた際には,血行動態の安定と並行して,すみやかに薬物による攣縮の解除を図ることが重要である。
周術期の冠攣縮はまれであるが,深刻な合併症と考えられている。特に術中は,浅麻酔,硬膜外麻酔の使用などによる自律神経系の変動,血管収縮薬投与による冠血管の収縮,換気量増大に伴うアルカローシス,低血圧,および循環血液量減少などを誘因として発症することが報告されている1)。
また,冠攣縮の既往がある患者に対しては,可能なかぎり誘発因子を避け,冠拡張薬を積極的に投与することが攣縮の予防に有効であることが示唆されている。一方,冠攣縮は,術前に既往のない患者でも突然発症する可能性があることから,冠攣縮の急性期薬物治療について理解しておくことは重要である。
本稿では,「冠攣縮性狭心症の診断と治療に関するガイドライン」2)(以下,ガイドライン)にもとづいて,冠攣縮の急性期薬物治療として,現在使用されている主要な薬物について概説する。
Copyright © 2013, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.