症例検討 周術期の血糖管理
巻頭言
高木 俊一
1
1東京女子医科大学 麻酔科学教室
pp.1205
発行日 2011年12月1日
Published Date 2011/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101404
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- 文献概要
世界の糖尿病患者が3億人を突破したことが国際糖尿病連合の調査で判明した。国別では中国が1位であるが,日本は6位で罹患者は1070万人という。これは日本人の実に13人に1人が糖尿病ということになり,糖尿病患者は日本中どこにでもいるどころか,毎日手術室で遭遇しても不思議ではない。
糖尿病患者の手術時期を,血糖値の変動やHbA1Cだけで決めるわけにはいかない。手術の緊急性や重症度も手術時期を決定する重要な因子であるからだ。だからこそ,血糖コントロールができるまで手術を待つか,緊急手術とすべきか,判断に苦渋することもあるだろう。加えて,緊急性や重症度により目標血糖値や周術期管理も変わってくる。
本症例検討では,よくあるシチュエーションをいくつか挙げた。「待機手術における血糖コントロールの目標をどうするか?いつ手術に踏み切るべきか?」。血糖にかかわる病態として,高血糖より怖い「意図しない低血糖」の問題。不思議なくらい必ずといっていいほど起こる「人工心肺中の高血糖」。糖尿病症例への「術中糖負荷」の是非。そして,糖尿病症例の極めつけとして「糖尿病性壊疽で下腿切断術を施行する症例」である。あなたはどんな麻酔をイメージするだろうか?
数時間の術中血糖値にばかり注目するのではなく,術前から術後にわたっての血糖管理に麻酔科医としてどう関与できるか,今一度考えてみる機会となれば幸いである。
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