症例検討 術後鎮痛
巻頭言
角倉 弘行
1
1国立成育医療研究センター 総合診療部
pp.249
発行日 2011年3月1日
Published Date 2011/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101169
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- 文献概要
麻酔の黎明期において麻酔科医に期待された主な役割は,手術中の患者の痛みを取り除くことで手術を行いやすくするための不動化を提供することであり,患者の生命の安全は患者自身の生命力に委ねられていた。しかし時をおかずに,患者の生命の安全を守ることこそが麻酔科医の主な役割であると認識されるようになり,鎮痛は麻酔科医に課せられた任務の一部へと後退した。このような大義名分のもと,術中の鎮痛はともかく,術後鎮痛は病棟や主治医任せという不毛の時代が続いた。硬膜外麻酔の登場は,麻酔科医が術後鎮痛に貢献することを可能にした。
そして時代が進み,抗凝固療法が普及した現在,硬膜外麻酔による術後鎮痛が選択できないケースも増加しつつあり,麻酔科医がいかに術後鎮痛へ取り組むかが再び問われている。ただし,麻酔自体の安全性は以前と比べて飛躍的に向上しており,周術期の快適性への患者のニーズも高まった今,術後鎮痛を病棟や主治医任せの時代に回帰することは,周術期管理のリーダーたる麻酔科医の存在価値自体を否定することになりかねない。
今回の症例検討では,術後鎮痛の意味を整理した後,硬膜外麻酔による術後鎮痛の是非や,麻薬によるIV-PCAや末梢神経ブロックによる術後鎮痛の方法を解説していただいた。本特集が,麻酔科医の原点である「鎮痛」について再考し,周術期管理のリーダーとしての役割を認識するきっかけになれば幸いである。
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