症例検討 管理に悩むリスクがある患者の麻酔1
巻頭言
津崎 晃一
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.1199
発行日 2010年12月1日
Published Date 2010/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101096
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- 文献概要
麻酔管理を困難にさせる要因には,術前合併症の存在とその重症度に加えて,手術操作に起因するものも含めた術中発症の病態が考えられる。とりわけ,前者については,ある程度のコントロールが可能な点で時間的余裕の乏しい後者より対処しやすいが,麻酔科医を悩ませる問題であることに違いはない。実際,最新の2009年度麻酔関連偶発症例調査(対象麻酔科管理症例数1275557例)によれば,報告された2311例の麻酔関連偶発症のうち,術前合併症を原因とするものは792例(34.2%)に及び,その内訳は,多い順に出血性ショック230例,循環器系疾患200例(心筋梗塞・冠虚血61例),呼吸器系疾患97例(気管支喘息18例)などであった。
麻酔の安全を脅かす存在としての術前合併症には,十分な術前評価と麻酔計画が何よりも必要である。本症例検討の対象となった虚血性心疾患や気管支喘息,大動脈弁狭窄,多発性硬化症は遭遇の可能性が決して低くなく,また,特有の病態生理を示すことから,机上の論理にとどまらない身近な問題として熟読されることを期待する。
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