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医療を取り巻く観点のなかで,今や「医療安全」は最も重視される項目の一つだろう。どこの病院でもインシデント・リポートの集約などを通じて要因分析を進め,診療手順の見直し,マニュアルの整備,チェックリスト,システムの整備を重ねることで医療事故の予防・軽減に努力とさらなる検討を重ねている(safety management)。
しかしそれでも「事故は起こる」。どれだけ対策を行っても医療からヒューマンファクターは除けないし,もともと生体を,しかも病気を抱えた人を相手にしているのだから,たとえ医療の過程に過誤が皆無でも事故,急変は起こり得る。予期できないことも無数にある。つまり,医療におけるリスクマネジメントは「事故を起こさないこと」を目標にするだけでは到底足らず,(一定の確率で必ず起き得る)不利益事象に対して,発生後に「いかに影響を最小限化」し「致命的結果を回避すること」が,必要かつ本質的に重要である(consequence management)。もちろんそれは第一に患者を守るためであるが,同時に結果的に医療者や病院を守ることでもある。急変時にしかるべき処置が取れていたか(そしてそれが記録されているか)は,事後に重大な影響がある。
さあ,そこで「院内急変」の出番だ。院内急変対応システムについては,それぞれの施設の状況,態勢により異なって当然であり,それぞれが工夫すべきなので,一定のやり方を強制することはなじまないだろう。
事故や事変の原因の多くにヒューマンファクターがあるにもかかわらず,緊急時の対応の鍵も突き詰めれば「対応者の個別の即応能力」に帰してしまうのは皮肉である。瀬戸際の場面で最後に発揮されるのは,あなたの力量以外にはない。器械はアラームを発してくれても,器械が患者を助けてくれることは決してないのだから。
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