- 販売していません
- 文献概要
問:バイタルサインvital signs(生命徴候)として正しいものはどれか。
①呼吸数,②意識,③血圧,④心拍数
a:①,②のみ,b:②,③のみ,c:①,③,④のみ,d:④のみ,e:①から④のすべて
―
解答技術上の問題点が指摘されて,今ではこのような組み合わせ形式の設問は医師国家試験などでは不適切出題とされるが,病棟実習に回ってくる卒前学生をつかまえれば,その答は結構危うい。「e:①から④のすべて」の返答は少なくない。「違うな。②意識,は入らないぜ」,と言うと意外な顔をされる。はたまた心肺停止状態で搬入された患者家族に,心停止・呼吸停止であることを十分説明したつもりなのに,「お話はわかりました。で,意識はあるのでしょうか」と聞かれてしまう。それほどに“意識”のインパクトは強いらしい。でも意識(状態)はバイタルサインには入らない。故に意識がなくても,例えば植物状態も睡眠中も,“バイタルサインは正常”である。
代わってバイタルサインに挙げるべき“体温”への認識は,なぜか希薄だ。体温もしっかり記録せよ。覚えていようか。遡ること24年前,昭和63年の秋から昭和64年にかけて,先帝昭和天皇が病篤き頃,テレビ画面の右下に(アナログ放送なので画面の一部を犠牲に)『陛下の本日の御容態』として,呼吸数,血圧,心拍数,体温の4項目の数字が連日放映されていたことを。恐れ多きが故に意識レベルの公表をはばかったという事情もあろうが,見よ,これら4項目こそ由緒正しきバイタルサインなれ。
本症例検討では体温異常として,時節を映して偶発性低体温症,昨年,一昨年と地球温暖化やら震災節電やらで耳目を集めた熱中症,そして麻酔科医の関心が高い術中悪性高熱症の3症例が提示されている。恒温動物たるヒトでは信じられないような「直腸温24℃」も復温すれば助かる。発汗停止した重症熱中病の皮膚は乾いて熱く,まるで「北京ダック」のようである。かの臨床像をとくとご覧いただきたい。
さて,今日も集中治療に精を出すとしよう。患者には常に,『熱い心と冷めた頭,そして温かい手』で。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.