徹底分析シリーズ 岐路に立つ産科医療:麻酔科医はいかにかかわるか
産科麻酔の歴史的展望と将来の日本の課題
小坂 義弘
1,2
Yoshihiro KOSAKA
1,2
1茨戸病院 ペインクリニック科
2島根医科大学
pp.416-419
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100301
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分娩時の痛みは,人種や文明度,教養などを超え,すべての産婦が経験する。しかし,民族性や文化,習慣および宗教などの背景が違うと,痛みの感じ方や考え方は異なる1)。無痛分娩の歴史は古く,先史時代から精神的,物理的,薬理学的手法の組み合わせで痛みを制御してきた。古代では薬草(ハーブ),木の根なども加えられ,祈祷師や呪い師によって調合されて現代に伝えられてきた。これらのことは,古代エジプトの記録や中国の歴史書に書かれている。『旧約聖書』「創世記」の第3章16節と第4章31節にはお産の痛みの記載がある2)。
分娩の際に麻酔を行う理由は,①分娩時の痛みを和らげ,②分娩痛に対する不安,緊張,恐怖のストレスから産婦を解放し,③疼痛による異常なホルモン分泌や母体の過換気を抑制し,④胎児と胎盤系の血液循環を良好に保たせ,⑤分娩を円滑に進めることである1)。しかし日本では,麻酔科医が手を差し伸べ妊婦が望んでも,親や祖父母が反対したり,医療訴訟問題絡みと,他科の医師の参入を嫌う産科医などもいて,分娩麻酔の理解がなかなか得られないのが実状であった。
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