連載 A.M.C.心臓手術と麻酔:第5回
急性A型大動脈解離に対する上行大動脈人工血管置換術
吉田 和則
1
,
内藤 嘉之
2
,
井出 雅洋
3
1明石医療センター 心臓血管外科
2明石医療センター 麻酔科
3神戸麻酔アソシエイツ
pp.80-91
発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100017
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症例
69歳の男性。身長155cm,体重60kg,BSA 1.6m2。以前から高血圧症を指摘されていたが,特に治療を受けていなかった。突然の胸背部痛を自覚し,当院救急外来に搬送された。大動脈CT検査を施行したところ,急性A型大動脈解離と診断された。来院時の意識は清明であったが,その後次第に意識レベルの低下を認め,緊急手術となった。
心臓外科から
大動脈解離は,内膜に生じた亀裂から血液が大動脈血管壁内へ流入し,中膜内に広がる血腫を形成した状態である。これにより血管壁内に偽腔が形成されるが,偽腔の内側は内膜と中膜の一部で,一方の外側は中膜の残りの部分と外膜で構成される。内膜に亀裂が生じた解離の起始部は,一般にエントリーと呼ばれる。また,本来の血管内腔を真腔と呼ぶが,偽腔に圧迫されて変形や狭小化を認める場合が多い。
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