海外だより
Canberraにて
伊藤 正男
1,2
1東京大学医学部生理学教室
2Australian National University
pp.154-155
発行日 1960年6月15日
Published Date 1960/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906136
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日本を出てからもう1年になりました。日本の20倍の国土を持ちながら人口は十分の一しかないこのオーストラリヤは,まことにのんびりした平和な国ですが,特に私のいるキヤンベラは30年も前から,オーストラリアの首都であるというのに未だ人口は4万あまり,山の中の盆地にひらけた静かな都市です。昔は羊飼の村だつたという事で,街をはずれると,あとはどこまで行つてもガムの木のまばらに生えたなだらかな山が続き,道端に,昔,流刑囚の住んでいた家のかまどの跡がぽつん,ぽつんと残つていたりします。
私の居るAustralian National Universityは大学院だけの大学で,いわゆる大学生はおりません。メルボルン,シドニー,アデレード,パース,ブリスベーン,タスマニア等にあるオーストラリアの諸大学,或は,ニユージーランド,その他の国の大学を出た人達が大学院コースをうけにやつて来ます。その設立の趣旨として"オーストラリアの人材が,年々海外に流出するのを憂え,人材に研究の場を提供する"という事がうたわれているそうですが,その通り,大学というよりは研究所の感があり,資金にも恵まれ,設備も整つた立派な内容を持つています。
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