Japanese
English
特集 学習と記憶の神経機構
特集「学習と記憶の神経機構」によせて
Introductory remarks
伊藤 正男
1
Masao ITO
1
1東京大学医学部生理学教室
1Department of Physiology, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.915
発行日 1978年8月10日
Published Date 1978/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904981
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
「学習と記憶」の問題は古くて新しい。それが人間の頭脳活動の上に占める比重の大きさは,記憶力を失い学習能力を失った時何があとに残るかを想像してみれば容易にわかる。その内在機構についてはこれまでほとんど知られるところがなく,きわめて漠然とした推測がなされているにすぎなかったが,計算機が進歩し,これに内部記憶と外部記憶の2種の機構が設けられること,記憶容量の大きさが計算機の能力にきわめて重要な意味をもつこと,記憶をもつ計算機を用いて学習能力のあるシステムが構成できることなどの知識が一般化するにつれて,「学習と記憶」の問題についての理解が促進され,あらためてその重要性が認識されるようになった。
記憶とは動物が過去の経験で得た情報を保持することであり,学習とは過去の経験に基づいて動物の行動が変容することである。そのような広い定義のもとで実際に取り扱われるものとしては「古典的条件づけ」,「オペラント条件づけ」,「運動の習熟」,「馴化」,「適応」,「代償」,「発育過程における外的条件の関与」などの諸現象がある。そのそれぞれについては本特集の各章で詳述されているが,いずれも「学習と記憶」という大きな問題のいろいろの側面をとらえたものということができる。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.