特集 Neurotransmitter—新しい展望
座談会「神経伝達物質研究—新しいbreakthroughを求めて」
伊藤 正男
1
,
川合 述史
2
,
大塚 正徳
3
,
金澤 一郎
4
1東京大学医学部第一生理学教室
2東京都神経科学総合研究所病態神経生理学研究室
3東京医科歯科大学医学部薬理学教室
4筑波大学臨床医学系神経内科
pp.571-583
発行日 1986年8月10日
Published Date 1986/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431905808
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司会(金澤) 神経科学には,いろいろなレベルの研究があるわけですが,認識,情動,記憶,あるいは意識という高次の脳機能に関して,一般社会でも関心が非常に高まっている時代だろうと思います。けれどもそういうものに一気に行きつくのではなくて,分解していきますと,こうした高次の脳機能も結局はニューロンとニューロンの情報伝達という非常にエレメンタリーな現象にまで下りていくことができるのではないか,という点に関してはあまり異論がないだろうと思います。そういう意味で情報伝達の担い手としての神経伝達物質に関する研究は,脳機能の研究におけるいわば最もbasicなレベルにあるものだと思われます。
今世紀の初頭,イギリスのCambridgeで若いOtto LoewiとElliottとの間に交わされた会話の中で,初めて化学伝達という概念が出てきたとされていますけれども,以来80年を経たわけです。この間にいくつかの神経伝達物質「候補」が登場してまいりました。アセチルコリンから始まってノルアドレナリン,ドーパミンなどのアミンの時代を経て,あるいはオーバーラップしながらGABAを中心としたアミノ酸の時代があったわけです。そしてほぼ10年ぐらい前から神経ペプチドの時代に入っているといわれております。
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