卷頭言
文献讀むべきか
戸塚 武彦
1
1日本醫大・生理
pp.47
発行日 1951年10月15日
Published Date 1951/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905605
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或る偉い有名な學者に向つて,「近頃こんな事を研究しかゝつています」と話したらば,「君,それは意味ないよ」と一言の下に斥けられてしまうことがある。そして彼は更に語を繼いで「その問題に就ては最初○○年に○○の○○○が手を着けたのだけれども,次いで○○の○○が○○年に之々の事をやり,更に○○年には○○と○○とが之々の問題を解決したので,もう大體話はついていることなのだから,今更もう何もする事は殘つていないよ」と,その理由をつけ加える。
この學者は誠にたぐいまれな博識の人であることは,誰も疑わないほどの人である。勿論たくさんの事を識つていると云うことは,識らないよりも遙に尊いことではあるけれども,この人の場合は,この樣にして識れば識るほど,益々する事がなくなつてしまうのであつて見れば,かえつて困つたことになるのではないかしら。
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