特集 生活改善運動の課題
"住宅の改善"を讀んで
今 和次郞
1
1早稲田大学
pp.55-56
発行日 1955年11月15日
Published Date 1955/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201617
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目下の住宅政策は,在来の貸家というものをなくし,公営住宅と自家住宅との二種類が対立していくような方策がとられているといえるのであるが,その過渡期におけるデコボコが甚だしいので混乱した印象を与えている。急速に公営住宅を増そうとすると,一戸当りの坪数が小さくなり,一戸当りの坪数を豊かにとろうとすると,住宅不足をどうしてくれるということになる。これらの両方からの板ばさみで,住宅の標準的な大さを理論ずけようとしたりしているが,そのことは空転にとどまつている。もともと生きるためにどれだけの坪数の住宅が必要かということは,食物の場合のように,はっきりした数字が出ないのが住宅というものの性格だからである。そこで,小さい家をどのようにしたらば住みよくなるかという研究の意味もあることになるが,しかし,目下の住宅政策としては,公営住宅の数を増すことの急務から,半出来の家屋を多数提供して,住み手の資金で半自家的意味の設備を各自の手で充実させていく方針を,わたくしとしては考えたい。
平面計画として引用しているいわゆるコア・システムといわれる原理らしきものにはわたくしは不服である。住宅というものは,都市計画や,停車場の設計と同じ原理では不適切である。家庭生活を営む場である住宅の中の人々の動きというものは,パチンコの玉のようであればいいというものではない。夫も,妻も,子供と,場合によつては,老人も単純な動きをする単位だと考えては誤りである。
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