特集 最近の栄養問題
岩田昌一氏の論文を讀んで(1)
吉川 春寿
1
1東大
pp.10-13
発行日 1953年10月15日
Published Date 1953/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201270
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岩田昌一氏の論説はまことにその通り,これにつけ加えるべきことは多くはない。日本人の生活環境が欧米諸国民に比べてはるかに低位にあることはいかに詭弁を弄してもおおいがたい事実であつて,ことに食生活の貧弱さについては甚しいものがある。日本人の体格が劣等であること,死亡率が高いこと,結核とか動脈硬化症等とかの,罹患率の高いこと等,公衆衞生学的に統計をとつて見てはつきり現われる欠陥は主として国民栄養の欠点に原因するといつても過言ではあるまい。この様なところから考えても,医科大学にとうの昔に栄養学講座というものが設けられてあるべきことは明らかであるのに,やつとこの1,2年になつてはじめて,その講座がつくられるようになつた。
医学部の栄養学講座はどうあるべきかということに関して岩田氏は甚だひろい内容をこれにあたえているが,私の考えとしてはそれほどまでにひろげることが現在すぐに必要かどうか,またそうすることが現在有効であるかどうかについては疑問をもつている。というのは,現在の医科大学の目的,或は教授内容は,昔からの伝統をそのまま受け継いで治療医学に専らである。なるほど,戦後,おそらくは米国のサジエスチヨンによるのかと思われるが,各医科大学に公衆衞生学講座というものはできた。
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