Japanese
English
綜説
血管の神経支配
Innervation of blood vessels
入内島 十郎
1
Juro Iriuchijima
1
1東京大学医学部医用電子研
1Institute for Medical Electronics, Faculty of Medicine, Univ. of Tokyo
pp.162-167
発行日 1965年8月15日
Published Date 1965/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902633
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今,もし十分な量の神経節遮断剤(たとえばhexamethonium bromide,メトブロミン)をヒトに静脈注射すれば,血圧はただちにショック・レベルとなり,脳貧血のため,もはや起立していることは不可能となるであろう。生体の末梢血管には絶えず循環中枢から交感神経血管収縮線維を介してインプルスが送られており,血管を一定の収縮状態に保つている。交感神経節を遮断すれば,このインプルスはそこで途絶するため,末梢血管は拡張して十分な量の血液を動脈系に貯えていることができなくなる結果,血圧の著しい下降が起こることになる。
血管の神経支配は骨格筋のそれと同様に,まず遠心性神経支配と求心性神経支配に大別できる。遠心性神経は血管運動神経(vasomotor nerve)とも呼び,これはさらに収縮神経(vasoconstrictor n.)と拡張神経(vasodilator n.)とに分類される。前者はその神経の活動により支配血管の径を小とする神経であり,後者は径を大とする神経である。すなわち,収縮神経は血管平滑筋の収縮を起こし,拡張神経は弛緩を起こす。哺乳動物の骨格筋には能動的な弛緩を起こす神経支配は存在しないから,この関係はむしろザリガニの鋏におけるような相反性二重神経支配を想起させる。しかし以下にのべるように,血管に対する収縮神経と拡張神経とは決して相反的に働くものではない。
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