特集 病気の分子細胞生物学
8.代謝・栄養障害
ペルオキシソーム形成不全症
藤木 幸夫
1
Yukio Fujiki
1
1九州大学大学院理学研究科生物科学専攻
pp.461-463
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901765
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[疾患概略]
細胞内小器官ペルオキシソーム(peroxisome)は,極長鎖脂肪酸のβ-酸化やプラスマローゲン型リン脂質の生合成など多くの代謝系に関わる。ペルオキシソームの形成機構については,細胞質(サイトゾル)遊離型ポリソームで合成された構成タンパク質が翻訳後ペルオキシソームに移送され,その結果ペルオキシソームが成長,分裂して増殖していくと考えられている。ペルオキシソーム構成タンパク質の輸送シグナルとしてPTS1(C末端3アミノ酸配列,SKLモチーフ),PTS2[N末端延長ペプチドコンセンサス配列(-R/K-L/V/I-X5-H/Q-L/A-,Xは任意のアミノ酸)]が同定されている。
ペルオキシソーム病にはペルオキシソーム酵素単独欠損症のほか,いわゆるペルオキシソームの生合成異常症がある。ペルオキシソームの欠損と複数の代謝障害を伴う疾患として,Zellweger症候群(cerebrohepatorenal syndrome,脳肝腎症候群),新生児型副腎白質ジストロフィー(neonatal adrenoleukodystrophy;NALD)および乳児型Refsum病(infantile Refsum disease;IRD)がある。Zellweger症候群患児では新生児期より筋緊張低下,肝腫大,精神運動発達遅延など多発奇形を有し,乳児期早期(数週間~1年以内)にほとんど死亡する重篤な常染色体劣性遺伝疾患である。
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