Japanese
English
特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
シナプスにおける伝達物質の放出機構
Mechanism of neurotransmitter release at synapses
溝口 明
1
,
北田 容章
1
,
西岡 秀夫
2
,
井出 千束
1
Akira Mizoguchi
1
,
Hiroaki Kitada
1
,
Hideo Nishioka
2
,
Chizuka Ide
1
1京都大学大学院医学研究科生体構造医学講座機能微細形態学分野
2科学技術庁科学技術振興事業団Takai-Biotimer Proiect
pp.190-197
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901192
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I.神経機能におけるシナプスの意義
神経組織では,外部環境からの情報収集,情報処理,行動の決定までの一連の機能を電気信号の伝達によって行っている。この電気信号による細胞間伝達は,一般の神経以外の細胞間ではギャップジャンクションによって行われるが,特に神経細胞ではシナプスと呼ばれる特殊な伝達装置によって行われる。伝達方法は,ギャップジャンクションがイオンやcAMPなどの低分子が往き来できる細胞間トンネル装置であるのに対して,シナプスは相手の細胞を興奮させたり抑制したりする活性を持つ神経伝達物質を開口分泌する分泌装置である。このシナプスの存在により,神経系では一つの神経細胞の電気的興奮を,次に伝達される神経細胞レベルでは興奮性にも抑制性にも,また両方向性にも情報として分岐させ,抽出できるのである(図1)。
シナプス分泌装置には多数の構造的分子的特殊化がなされており,電気信号を迅速に正確に伝達できるようになっている1,2)。それらの主な特徴は(1)神経伝達物質を含むシナプス小胞は大きさが極めて均一(直径40~50hm)で,1個当たりほぼ同数の神経伝達物質を含んでいる。(2)電気信号の到着,前シナプス形質膜の脱分極から電位依存性Ca2+チャネルの開放→細胞外Ca2+イオンの前シナプス内への流入→シナプス小胞膜と前シナプス形質膜の融合→神経伝達物質の放出までの過程が0.0002秒で完了する。
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