Japanese
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特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
開口放出の電気的測定とそれによる最近の展開
Progresses in the research of exocytosis with electrophysiological techniques
河西 春郎
1
,
二宮 靖典
1
Haruo Kasai
1
,
Yasunori Ninomiya
1
1東京大学医学部生理学第一講座
pp.198-204
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901193
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開口放出は分泌小胞の細胞膜への動員やCaシグナルも含んだ複合現象であるが,その核心部分は分泌小胞膜と細胞膜の膜融合である。膜融合に関係すると考えられる蛋白質が多数リストアップされ,膜融合の仕組みが理解される日が近いとここ数年感じられたが,膜融合の機構を真に明らかにするためには,膜融合を直接的定量的に測定する技術を用いることが必要であることが指摘されている。開口放出の律速段階としてCaシグナルがあり,それが細胞によって多様で複雑であることはよく知られている。それゆえに,その下流にある「融合器官」(fusion machinery)の「性能」を測定することは難しく,最近までなされてこなかった。そもそも「融合器官」の「性能」とは何かすら特定されていなかった。われわれは「融合器官」の「性能」を明らかにし,それにより「融合器官」というナノマシンの形態や構成分子を解明したいと考えている。以下に述べるわれわれの研究では,ケイジドCa試薬を利用することにより,Caシグナルの多様性を回避して,分泌小胞の融合しやすさ(融合時定数)を測定し比較した。その結果,融合時定数が分泌小胞や細胞により1万倍以上異なり,「融合器官」の「性能」を表すというに相応しい定数であることが初めて明らかになった1-4)。この研究を以下に紹介しながら,開口放出の電気的測定の方法論について解説する。
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