Japanese
English
特集 神経再生・修復をめぐって
脊髄における損傷後修復の細胞学
Cytology of Posttraumatic Nerve Rrepair of the Spinal Cord
井出 千束
1
,
北田 容章
1
,
早柏 琢哉
1
,
溝口 明
1
,
S. Chakrabortty
1
Chizuka Ide
1
,
Masa-aki Kitada
1
,
Takuya Hayagashi
1
,
Akira Mizoguchi
1
,
Chakrabortty Shushoban
1
1京都大学医学研究科生体構造医学機能微細形態学
1Department of Anatomy and Neurobiology, Kyoto University Graduate School of Medicine
キーワード:
nerve regeneration
,
spinal cord
,
dorsal funiculus
,
cytology
,
axon-glinal cell interaction
Keyword:
nerve regeneration
,
spinal cord
,
dorsal funiculus
,
cytology
,
axon-glinal cell interaction
pp.236-241
発行日 1998年3月1日
Published Date 1998/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901251
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はじめに
損傷された中枢神経では,組織の修復とともに再生軸索の伸長が首尾良く行われるかどうかが中心課題である。今のところ,脊髄では再生軸索が損傷部位を通って,ワーラー変性部位に入り,標的まで伸びてシナプスを形成するという細胞学的な所見は見当たらない。末梢神経では,シュワン細胞と基底膜が再生軸索の足場と栄養因子を供給する構成要素として有効に機能しているが,中枢神経にはそのような再生に有効な細胞あるいは構造がない。成体のグリア細胞は再生軸索の有効な足場とはならないようである。しかしこれもはっきりした理由があるわけではない。というのは,これまで信じられてきた「白質は再生軸索の通路とはなりにくい」という見方に対して,脳梁内に脊髄神経節細胞を植え込むと神経節細胞から軸索が白質内に活発に伸び出すという所見7)が見い出されているので,白質が再生軸索の伸長に阻害的に働くという見方には必ずしもとらわれる必要はないようである。
損傷された中枢神経線維から多くの再生芽が萌出するが,1)その再生芽を有効に伸ばす細胞環境を整えること,2)さらに再生軸索をワーラー変性部位に進入させること,の二つが脊髄における神経再生を可能にするための大きな課題である。
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