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特集 細胞測定法マニュアル
細胞運動測定法
シナプス伝達物質放出の素量解析
Quantal analysis
山本 長三郎
1
Chosaburo Yamamoto
1
1金沢大学医学部第二生理学教室
pp.513-515
発行日 1988年10月15日
Published Date 1988/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905205
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シナプス前線維終末からの伝達物質放出に際して,伝達物質の数千分子の塊(素量)が放出の最小単位となる。つまり終末に達したインパルスは終末から整数個の素量を放出させ,それに対応した電位変化をシナプス後細胞に誘発する。1個の素量によって発生する興奮性シナプス後電位(EPSP)を微小EPSPという。適当な方法を用いると,1本のシナプス前線維と1個のシナプス後細胞の間のシナプスについて,線維の各インパルスに応じて放出される素量数の平均値(m)や微小EPSPの平均振幅(q)を計算することができる。この方法を素量解析法という。シナプス伝達の修飾が観察された場合,素量解析法を用いれば修飾の原因を終末に求めるべきか,シナプス後細胞に求めるべきかを推定することができる。つまり,mの変化は伝達物質放出量の増減を意味する。またqの変化は,例外も考えられるが,一般にはシナプス後細胞での修飾,たとえば伝達物質に対する受容体の感受性の増減を反映すると理解される。
ザリガニの神経筋伝達では,mやqの値を直接計測することが可能である。また脊椎動物の神経筋伝達では,自発する微小終板電位の振幅の平均値がqに等しいと考え,運動神経の刺激に応じて発生する終板電位の振幅の平均値をqで割ればmが求められる。一方,多数の求心線維がシナプスを作っている中枢ニューロンでは,自発する微小EPSPの振幅を計っても特定の線維末端から放出される素量についてのq値を知り得ない。
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