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特集 ミトコンドリア
Long Evans Cinnamonラット(Wilson病モデル)の臨床病理―ミトコンドリアの形態異常を含めて
A clinicopathology of Long Evans Cinnamon rat (a model for Wilson's disease): morphological abnormalities of the mitochondria
𣜜丸 博幸
1
,
武市 紀年
2
Hiroyuki Tochimaru
1
,
Noritoshi Takeichi
2
1北海道大学医学部小児科
2北海道大学癌研究施設細胞制御部門
pp.652-658
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900861
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1975年北大において樹立されたLong Evans Cinnamon(LEC)ラットは常染色体劣性遺伝形式をとる遺伝性の肝炎,肝癌を自然発症し,ヒト肝疾患のモデルとして近年注目されていた1)。また,われわれは激症型の肝障害をきたすラットでは,尿細管壊死による急性腎不全を合併し死亡することから肝腎症候群のモデルとしても有用であることを報告した2)。最近,この肝および腎障害の成因として銅代謝異常が存在することが明らかにされた。すなわち,肝および腎への銅の異常蓄積が認められ,これにより組織障害が惹起されていることが示唆されている。さらに血清中の銅およびセルロプラスミンの低下が認められることから,本ラットがWilson病ときわめて類似した病態を呈していることが明らかとなった3,4)。Wilson病は若年性の肝硬変と錐体外路系機能不全を特徴とする常染色体劣性の遺伝性疾患であるが,最近本疾患の遺伝子異常が明らかにされつつある5)。Wilson病には数種の病型があるが,これらの病型のうち,腹部型Wilson病では急性肝不全,溶血性貧血を呈し時に急性腎不全を合併する予後不良の病型であり,LECラットの激症型ときわめて類似した臨床像を呈する。
Wilson病の銅代謝異常のメカニズムが不明である現在,LECラットはWilson病の発症機序の解明および治療の格好のモデルであると考えられる。
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