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特集 ミトコンドリア
分裂装置からみたミトコンドリアの起源と進化
Origin and evolution of mitochondria with emphasis on mitochondrial dividing ring
黒岩 常祥
1
Tsuneyoshi Kuroiwa
1
1東京大学大学院理学系研究科
pp.643-651
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900860
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遺伝物質DNA(ゲノム)は,動物細胞においては細胞核とミトコンドリア(mt)に存在し,植物細胞ではさらに色素体にも存在する。しかし最近までmtや色素体のような細胞質にあるオルガネラのDNAを簡単にin situで示すことができなかったため,mtは細胞内のATP産生の場として,色素体は葉緑体の機能である光合成の場としてのみ取りあげられてきた。また,それらのDNAを扱う場合には分子生物学的にのみ扱い,そのオルガネラ内での存在様式やオルガネラの分裂・増殖様式などに関してはむしろ関心が低い。細胞内のDNAを観察する従来の技術,例えば代表的なフォイルゲン染色法はDNA分子とタンパク質の結合が強固な細胞核内のDNAを可視化するには適していたかもしれない。しかしすでにわれわれが何度も指摘してきたように,オルガネラDNAとその結合タンパク質からなるオルガネラ核の観察には不適切であり,処理過程で,変性,溶出,分解を起こし,実際にはかなりの量のオルガネラDNAが細胞内に存在していても視覚化できなかった。これに対し新たに開発したテクノビットDAPI法ではたくさんのオルガネラDNAを認めることができる。この方法で卵細胞のオルガネラ核DNA量が,通常の細胞の数千倍にも達することがわかり,オルガネラの生活環におけるダイナミックな変化が浮き彫りにされてきた。
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