特集 現代医学・生物学の仮説・学説
3.発生・分化・老化
胚葉の形成と分化
平光 厲司
1
1埼玉医科大学解剖学教室
pp.490-493
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900619
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
概説
発生学といえば胚葉を思いおこす人が多いらしい。胚葉にはそれほど強い印象を残す響きがあるのだろうか。胚葉という語は,もちろんドイツ語Keimblattの訳である。ここに胚葉が認識された19世紀ドイツ形態学の名残がある。それは進化論の影響を受けて系統発生と結びつけられ,やがて20世紀の実験発生学に上つて各胚葉の運命,相互作用の解明という新しい展開をみせたのであつた。胚葉概念はいわば100年以上にわたって時代の流れにもまれ続けてきたのである1)。今日では胚葉の特異性は否定されているが,その形態学的意義が失われたわけではない。しかし誤解もある。ここであらためて、胚葉について考えてみたい。
胚葉説:「細胞説」に匹敵するくらい重要である,とO. Hertwig(1910)が書いている「胚葉説」は,生物学,発生学の歴史には必ずといってよいほど言及されているので,詳細は省くとしても,主要点だけはメモしておきたい。すなわち,①胚葉説は後生説と不可分の関係がある。②両説の基盤はC. F. Wolff(1764)にあるとされる。ただしその影響はMeckel(1812)によつて翻訳されたWolffのラテンテキストで,胚葉概念を確立したのは,このテキストに触発されたC. Pander(1817)とその同門K. E. von Baer(1828-1837)である。
Copyright © 1993, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.