Japanese
English
特集 組織幹細胞の共通性と特殊性
Ⅲ.多様性を示す幹細胞:Q.分化決定と可変性の関係とは?
神経堤—“第4の胚葉”の分化多様性は如何にして獲得されたか?
Neural crest:How did the “fourth germ layer” acquire diverse differentiation potential?
栗原 裕基
1
Kurihara Hiroki
1
1東京大学大学院医学系研究科代謝生理化学分野
キーワード:
神経堤
,
幹細胞
,
多分化能
,
領域性
,
進化
Keyword:
神経堤
,
幹細胞
,
多分化能
,
領域性
,
進化
pp.146-150
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201333
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
神経堤(あるいは神経冠)(neural crest)は,脊椎動物の胚発生において神経外胚葉と表皮外胚葉の境界に生ずる幹細胞集団である1)。神経堤細胞は,神経板から神経管が形成される過程で,その辺縁から上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition;EMT)を経て遊走し,知覚および交感神経細胞やグリア細胞,副腎髄質細胞,色素細胞のほか,頭部では骨,軟骨,歯牙,血管平滑筋など間葉系組織の構成細胞に分化する。神経堤は間葉系細胞への分化の有無により,前後(頭尾)軸に沿って頭部(cranial)神経堤と体幹部(trunk)神経堤の2つの領域に大きく分けられる。ニワトリ胚ではその境界は第3-4体節間に相当する。この境界前後(第1-7体節)と最後尾(第28体節以降)の領域からは腸管神経叢を形成する迷走神経が派生し,それぞれ迷走(vagal)・仙骨(sacral)神経堤として区別されることもある(図1)。神経堤の発生異常は,頭部顔面形成異常やヒルシュスプルング病,先天性中枢性低換気症候群などの先天性疾患を来すことが知られており,神経堤細胞に起源を有する神経芽腫や神経線維腫症などの腫瘍性疾患も含めて,神経堤症(neurocristopathy)と総称されている2)。
Copyright © 2021, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.