ヒューマンバイオロジー--臨床への展開 体外受精
体験を語る
人工受精と体外受精とハイテク医療
大野 虎之進
1
,
吉村 慎一
1
Toranoshin Ono
1
,
Shinichi Yoshimura
1
1東京歯科大学附属市川総合病院産婦人科
pp.810
発行日 1985年10月10日
Published Date 1985/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207266
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近頃新聞紙上を賑わしているハイテクノロジーという言葉は医療の領域にも密着し,基礎となった分子生物学のジャンルが確立されて久しくなる。その間の研究開発は目ざましく,医療,工業,農業,畜産と,あらゆる技術が集約的発展を遂げ,互いに入り組んだ科学構造を形成した。バイオテクノロジーによる新薬の開発は激しさを増し,ファインセラミックのような新素材は医療の面にも特別の分野を開きつつある。免疫機構の解明は分子量的生体メカニズムと疾病との関連を治療化へと推進せしめた。コンピューターの導入はCTスキャンを生み,ヒト生体メカニズムや病態管理が進み,他方面のコンピュートピア化とともに人間社会そのものが膨大な情報処理による完全管理社会になるのもそう遠い将来のことではないであろう。今や物的,精神的構造が,世界的に極めて短時間のサイクルで変換されていく。価値感の変化はますますスピードをあげていくに違いない。
35年前慶応病院でわが国最初のAID児が誕生してから,同大飯塚教授の管理下にあくまで学問的な配慮によって6,000人に及ぶAID児が生まれ,数知れぬ家庭に幸せと希望とをもたらした。この陰には種々の問題を乗り越え,また不足する提供精子の有効利用のために凍結保存が附発された。1970年後半には同大における凍結精子によるAID児は160名に達し,アイスベビーなどと騒がれた。
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