特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
分泌
菅野 富夫
1
1北海道大学獣医学部生理学教室
pp.416-419
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900594
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概説
分泌細胞が分泌物の素材を取り込み,分泌物を生合成し,細胞内を移動させ,貯蔵し,分泌刺激が受容体に結合して細胞内シグナルを介して分泌物が細胞外へ放出されるまでの一連の細胞反応を総称して分泌secretionと表現する。分泌は5形式に分類されているが1),本章ではこれらの中から現在もっとも研究が集中している開口放出(exocytosis)を中心に,考察する。
開口放出は,蛋白質,ペプチド,ATP,アミンを分泌するニューロン,パラニューロン,腺房細胞,肥満細胞などの分泌細胞に共通する放出形式である。この際の開口放出は,刺激始動性あるいは調節性開口放出(stimulated or regulated exocytosis)と表現され,小胞が細胞膜に到着するやいなや進行して細胞膜に新しい構成要素を挿入する機構としての膜構成開口放出(constitutive exocytosis)とは区別される。調節性開口放出では,分泌果粒(secretory granule)あるいは小胞(vesicle)の限界膜と分泌細胞膜・放出部位内面とが接着し,両膜が融合し,融合部に小孔が生じ,この開口部を通って果粒あるいは小胞の内容だけが細胞外に放出される。Ca2+シグナルが開口放出をひきおこすまでの分子機構を概説した。
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