特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
細胞骨格
石川 春律
1
1群馬大学医学部解剖学教室
pp.420-423
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900595
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概説
細胞骨格(cytoskeleton)の概念は漠然としたものであるが、細胞を内部から構造的に支持する細胞質線維系ということができよう。細胞の形が蛋白質性線維成分からなる骨組みによって支えられているという考えは以前からあった。この骨組みを表す「細胞骨格」は長い間,単なる概念にとどまっていた。電子顕微鏡技法の発展により,個々の線維成分が明瞭に可視化されるようになって,はじめて細胞骨格の実体が明らかになった。その後、構成蛋白質の生化学的分析も進み,細胞質の基本的要素としてとらえられ,その生理機能の重要性が認識されるようになった。細胞骨格の概念は以前考えられていたよりはるかに広くなっている。
細胞はそれぞれ特徴的な外形を有し,内部でも,核をはじめミトコンドリア,小胞体、ゴルジ装置などの膜オルガネラがある一定の分布や配列をとっている。さらに,細胞内でオルガネラや顆粒などが方向をもって移動し,物質も輸送されている。細胞のそのような形態や活動を支えるためのおもな担い手が細胞骨格といえる。また,同じ細胞骨格要素が運動装置を作り,いろいろな動きの原動力発生の場となっている。
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