特集 開口分泌のメカニズムにおける新しい展開
特集によせて
小澤 一史
1
1京都府立医科大学第一解剖学教室
pp.162-163
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901187
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細胞内で合成された物質が細胞外へ放出される様式の一つに開口分泌(exocytosis)がある。これは,細胞内で合成された物質が分泌顆粒に含有されて,細胞内輸送によって細胞膜に近づき,細胞膜と分泌顆粒の膜とが融合し,細胞外と交通し,顆粒内の物質を細胞外へ放出する機序である。近年の細胞生物学的アプローチの進歩により,この開口分泌に関わる種々の機構が解明されつつあり,多くの因子が関与することがわかってきた。一方,開口分泌のメカニズムを理解する上で,単に開口分泌放出様式そのものだけの理解ではなく,細胞内で合成された物質が分泌顆粒として形成され,開口分泌の場まで到達する過程のメカニズムの理解が,開口分泌現象の理解に欠かせないことも併せて重要な課題の一つとして認識されている。
例えば,ホルモンや神経伝達物質といった化学物質は,遺伝子情報に基づき,細胞内の粗面小胞体で合成され,細胞内小胞輸送によりゴルジ装置へ運ばれ,ここで種々の修飾やプロセッシングを受け,さらに凝集,濃縮され,分泌顆粒が形成されてゴルジ装置,特にtrans Golgi network(TGN)と呼ばれるゴルジ装置を構成する重要な部分から出芽し,細胞内に貯蔵され,生体内の環境に応じて細胞内を移動し,細胞膜直下に進み,膜融合を起こして,すなわち開口分泌を起こして,細胞外へ放出されるわけである。
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