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あとがき
岡本 仁
pp.94
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200764
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現代社会は,個人と個人が直接会って関係性を構築するだけでなく,SNSなどを通じて,個々人が以前であれば考えられなかった多くの人たちと社会的関係を結ぶようになってきた。一方でこれまでは個人は,村落や会社や学級などのように個人の意思とは関係なくあらかじめ与えられた集団の中で,集団が内包する多様性に適応した社会的行動をとることに適応してきたが,SNSはいわば同好の志の集まりで,その中では,集団が持つ凄まじい社会的同調化圧力に適応して振舞わなければならない。急速に変遷する社会構造の中で,私たちの脳は,はたしてその適応性を広げているのか狭めているのか。トランプ現象に代表される現在世界で起きている様々な問題は,私たちの脳の社会適応性の変化に起因しているように私には思えてならない。このような問題に迫るためにも,社会と脳がどのように相互作用して,互いに変化を生み出しているのかの研究を深めていく必要があるだろう。本特集号が,このような問題を考えるきっかけになれば幸いである。
また,今回力のこもった原稿を執筆していただいた「仮説と戦略」の角南先生,「実験講座」の吉田・華山両先生,「解説」の守屋先生に深謝したい。(岡本 仁)
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